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インドネシア通信 『驚き!』…の巻き

 

本日驚きの経験をしました。

今までジャカルタで通関する場合もバリで通関する場合も

『こんにちは、世話になるよ』、『さようなら、世話になったな』、という

気持ちを込めてパスポートに5万ルピア(500円)を挟んで提示して

おりました。

イミグレの担当官もニコッとしてこれを受け取り感謝を意を受け止めて

くれたのでした。

これを入・出国審査で月2回、一年で24回、そしてこんな生活を

10年以上続けて参りましたので240回も繰り返してきたのです。

これは小職の儀式です。

『インドネシアへ入るぞ!、これから仕事をするぞ!』

『日本へ帰るぞ、ご苦労様…』、

この儀式を通してこんな会話を心の中で呟き続けて来たのでした。

 

それがなんと、今夜、崩れてしまったのです。

 

バリでの出国通関の際、挟んだお金を突っ返されてしまったのです。

勿論通関士君は、『これはナンだ!』、とは言いませんでした。

お金が挟まれたパスポートを小職の顔の前に黙って示したのです。

仕方なく、如何にも空港税のお釣りだったかのごとく装って受け取り

直しました。

240回目にして初、否、インドネシアへ行き来する様になった1979年

以降初めての出来事です。

とうとうインドネシアでこの様な経験をする日が来てしまったのです。

ショックと共に嬉しさもこみ上げてきました。

 

インドネシアは猛烈な勢いで変わりつつあります。

経済は毎年5~6%の成長を続け庶民生活は確実にレベルアップして

おります。

昔バスに乗っていた人はオートバイを買い、昔オートバイに乗っていた人は

自動車を買いました。

日本では考えられないような大規模複合商業ビルがドンドン建ち投機用

リゾート&高層マンションがあちこちにその姿を現しております。

日本のバブルを思い出すがごとき情景です。

 

今までは大金持ちかド貧乏だった庶民の中に中間所得層が出来始め、

街を歩く人達の服装も随分華やかになりました。女性が綺麗に見えます。

オランダ瓦の茶色に薄暗い白熱電灯の茶色が重なり女性の茶色バテック

ワンピースが駄目押しの暗いイメージを作っていたインドネシアは遠い昔話に

なってしまいました。

 

この様な生活様式の変化を受けてとうとうインドネシアの汚職意識にも

変化が見られたのでしょうか…

汚職を潤滑油と称していた古い体質の小職にとって今日2010年の12月

26日は驚くべき相手が現れた記念すべき日となってしまったのです。

 

これからインドネシアはドンドン変って行くでしょう。

昔、潜在能力を発揮し得ない不甲斐なさから、『眠れる獅子』と揶揄されて

きた(超)大国の目覚め…(なのかも知れません。)

殆ど全ての資源を自国内に持ち2億5千万もの国民を抱えた(超)大国。

2億5千万に中間所得層が出ればどれだけの自国内購買力が芽生えて

来ることでしょう…。

インフラ整備を進めて資源を活用出来るようになればどんな輸出大国が

できることでしょう…。

 

中国が勃興し始めた頃、インドネシアから中国への企業シフトが見られました。

木材業界でも多くの人(企業)が中国の時代を声高に主張しました。

そんな中で、意地でもインドネシアにしがみつきこの国の発展に期待を掛け

雌伏すること10有余年、

『今に見ていろ、インドネシアの時代が来るぞ!』、と一人叫んでも聞いて

くれる人さえおらず、中国びいきに傾く業界に悔しさを募らせた日々…、

そんな気分を晴らしてくれるインドネシアの大躍進です。

 

勿論中国はインドネシア以上の躍進をしております。

その事実を否定するものではありません。

 

しかし、

インドネシアはスハルト時代の実質的軍政国家から民主国家へ脱皮しました。

脱皮した上での経済発展なのです。

中国は民主国家への脱皮が出来ておりません。

どのように顔を取り繕ろうが共産主義国家であることは否定できません。

共産主義と民主主義が相容れないものであることは自明の理です。

共産国家でありながら民主主義のよい面だけ採ろうという壮大な国家実験下に

あるのです。

私有財産を否定することで成り立つ共産主義が、

私有財産なくしてはなり立ち得ない経済発展を遂げているのです。

あり得ない矛盾を時限爆弾として内包したままでの経済発展なのです。

どこで本当の顔が出てくるのでしょう?

相容れない対立を解決せずに眼前の利益だけ取ろうという虫のよい体制が

いつまで仮面を被り続けられるものでしょうか?

 

小職はインドネシアを第二の故郷として、ここで夢を見続けるつもりです。

潤滑油を使わないインドネシアを見る日が来るとは思いもよりませんでした。

壊されない自販機が動いている姿を見れるとは思いませんでした。

建国の立役者、スディルマン将軍が見つめる先には、きっと明るく清い(?)

大躍進国家、インドネシア共和国が現れるでしょう。

 

インドネシアの発展に期待して、2011年を迎えようと思います。

 

皆様、よいお年を!