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インドネシア通信 『洪水の楽しみ?』…の巻き       神谷典明

 

インドネシアでは今日春節(IMREK)の終わりを飾るチャップゴメという

節目の日を迎えました。

春節(1月31日)から2週間目の2月15日がチャップゴメに当たります。

これが終わればシナ正月も終わりを告げます。

 

暑さ寒さも彼岸までと申しますが、節分の過ぎた日本でも例年にない

大雪に見舞われているようです。

インドネシアでも今年の雨季は去年と同様きつく、インドネシア各地で

洪水被害を起こしております。

美人の産地とされる北セレベスのメナド市内でも洪水が発生しました。

さすが美人の産地だけあって、色白の見目麗しい女性が洪水の中に嫣然と

微笑む写真がブラックベリーメッセンジャーで拡がり話題を集めております。

去年はジャカルタの目抜き通り、タムリン通りまでが水に浸かり大騒ぎとなりました。

この時も水の中を歩く傘を持った妙齢の女性がスカートをたくし上げ過ぎて

白いおみ足と下着が見えてしまった写真が世間を駆け巡りました。

インドネシアの人々はどんな苦境の中に置かれても楽しみを失わない陽気な

民族です。

 

喜んでばかりもおれません。

ジャカルタの洪水は毎年繰り返されているのです。

去年はジャカルタ目抜き通りに立っている高層ビルの地下駐車場へ水が入り、

スタンバイしていた運転手さん達が幾人も亡くなられました。

クラパガディンという高級住宅街も水に浸かり、これを見た一般庶民が、

『神様は、金持ちにも平等に洪水被害を与えるのだ!』、と、日頃の溜飲を

下げておりました。

洪水発生のメカニズムは明白であり、何ゆえ対策を打たないのか不思議です。

それは二つ。

①川や側溝に流されるゴミ、これが水門を詰まらせ洪水を引き起こします。

②ボゴール水門の開閉、ジャカルタ郊外に位置する高原都市ボゴール、

  海より吹いて来る湿り気を含んだ風が冷やされこの都市部に雨を

  降らせます。

  この雨を調整する水門があるのですが、溢れそうになると開門します。

  開門しなければボゴール市内が水浸しになるからです。

  でも、開門すればその下流域に位置するジャカルタは約10時間で

  洪水に見舞われてしまいます。

  ジャカルタが晴れていようと開門10時間で洪水です。

  ジャカルタ市民はこの現象を、『ボゴールからの贈り物』、と皮肉を込めて

  呼んでおります。

 

毎年繰り返される洪水騒ぎですが、35年間も見て来ますと騒ぎの内容に

若干の変化が見られることに気付きます。

内容が最近色濃くなってきているのです。年と共に酷くなって来ているのです。

それだけ自然が厳しくなってきているのか…?

それともインドネシアの人々が持つ、『喉元過ぎれば暑さ忘れる』、という誠に

ノー天気な徳性故なのか…?

 

洪水の度に艶かしい女性の姿がネットを駆け回る国民性ですので、後者なの

かも知れませんね。

 

 

こんな状況のジャカルタ市で渋滞解消の為に地下鉄を掘ろう、と言う意見が

出ています。

洪水の水が地下鉄を飲み込む悪夢を現実のものにすることはないでしょうね…

果してジャカルタに地下鉄は似合うのでしょうか?